「公認会計士試験のバランス調整について」の公表

 本TOFFのホームページに、2025年5月12日に「会計系検定試験・資格試験の動向」を掲載しましたが、2025年6月12日に公認会計士・監査審査会が、「公認会計士試験のバランス調整について」を発表しました。

 私たち会計コンサルティングを提供させて頂いているチームにおいても、公認会計士の資格を持つ方は、高い価値のあるコンサルティングを提供できる人材であり、公認会計士試験制度の変更は無関心ではいられません。

公認会計士試験のバランス調整について」では、公認会計士および公認会計士試験について以下のように分析しています。
・ 公認会計⼠試験の受験者数は、2006年の新試験導⼊後、いわゆる「待機合格者問題」に伴い1万⼈程度まで減少したのち、最近では2万⼈を超える⽔準まで増加した。
・短答式試験は、合格率が低すぎることや1問あたりの配点が⾼い問題が合否に与える影響が⼤きいこと等から、必要な知識を体系的に理解していても合格できない者が多数⽣じ得る。
・論⽂式試験は、合格率が⽐較的⾼いことや科⽬によっては記述問題の分量が減少していること等から、必要な思考⼒や応⽤能⼒等を⼗分に訓練できていなくても合格し得る。
・ 受験者数の増加に伴い、短答式試験の合格率が低下し、⼀⽅で、論⽂式試験の合格率は相対的に⾼い⽔準となっているなど、それぞれの試験の位置づけ・役割からしても課題がみられる。
・ 監査の品質管理の強化が求められると同時に、監査業務における英語との関わりやITの活⽤が進むほか、サステナビリティ情報の開⽰・保証の導⼊に向けた動きがあり、公認会計⼠試験の合格者に求められる知識や能⼒も拡⼤している。

これらの状況を踏まえて、今後の対応として、以下の方向性を打ち出しています。
【対応①】短答式試験と論⽂式試験の合格率の調整(論⽂式試験の合格基準の⾒直し)【2027年試験より実施】
【対応②】短答式試験の1問あたりの配点及び試験時間等の調整 【2026年試験より実施】
【対応③】試験問題の出題や能⼒判定に係る課題への対応
(1)短答式試験と論⽂式試験の位置づけ・役割に応じた適切な出題 【2026年試験以降、随時対応】
(2)論⽂式試験の選択科⽬における能⼒判定の適正化
(3)公認会計⼠の業務や求められる能⼒の拡⼤に応じた出題(英語による出題、サステナビリティ情報の開⽰・保証及びITの活⽤に関する出題について検討)

 本発表を受けて、少なくても私(川野克典)が指導している公認会計士試験合格を目指す学生の間には、多少の動揺がみられます。全体の受験者(潜在的受験者)に与える影響が注目されますが、初学者が公認会計士試験合格までは2~4年を要することを考えると、もう少し試験制度変更の実施までに猶予期間を設けて欲しかったと思います。