決算は問題点を抽出するチャンス

 3月決算の企業にとっては、4月からいよいよ年次決算が開始されます。経理・財務部門にとって一年で最も忙しい時期がやってくるわけですが、この繁忙期を「ただ耐え忍ぶ期間」にしてはいけません。単に目の前の業務をこなすだけでなく、業務中に発生した遅延、ミス、あるいは二度手間となった「やり直し」があれば、その都度、付箋紙(ポストイット)にメモを残すことを習慣化しましょう。そして、それを決算日程や部門単位で区切ったホワイトボードに貼り出し、問題点を「可視化」することを強く推奨します。

 リアルタイムで記録を残すことで、各担当者の正確な業務進捗が把握できるようになります。これは単なる管理のためではなく、決算終了後に「次回の決算をいかに楽にするか」を検討するための貴重な財産となります。現場からは「忙しくてメモを取る暇もない」という声が聞こえてきそうですが、付箋を書くのに要する時間はわずか1〜2分です。皮肉なことに、「忙しい、忙しい」と口癖のように言っている担当者ほど、実は自身の業務プロセスを振り返る機会を失い、改善が進まないという悪循環に陥っています。自分自身の仕事を少しでも楽にするために、このわずかな「記録の手間」を惜しんではいけないのです。

 昨今、経理DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれていますが、問題点が明確になっていなければ、適切なデジタルツールの選択もできません。「どの工程で手戻りが多いのか?」、「どの作業に予定以上の工数がかかっているのか?」これらが可視化されて初めて、「どの業務から優先的にデジタル化すべきか」という投資対効果の高い優先順位が決定できます。闇雲なデジタルツール導入は現場を混乱させるだけですが、可視化された課題に基づくデジタル化は、確実な業務改善へと直結します。

 また、組織文化の面でも変革が必要です。いまだに「遅くまで残っている人が優秀」「忙しく立ち回っている人が貢献している」といった古い風土が残っている部門も見受けられます。しかし、真に優秀な組織とは、属人化した業務を排除し、仕組みによって生産性を高められる組織です。

「忙しい人」が評価される時代から、「改善ができる人」が評価される時代へ。そのマインドセットの転換点となる第一歩が、日々の「記録」であり「問題の可視化」なのです。今年の決算は、ただ終わらせることを目標にするのではなく、来年の自分たちが笑顔で業務に取り組めるよう、ホワイトボードを付箋で埋め尽くすところから始めてみてはいかがでしょうか。